Hello,僕の初恋
◇
「それで、ブラックコーヒーの歌詞を頼まれたってわけ?」
お弁当の卵焼きをつまみ上げながら、直ちゃんはそう言った。
直ちゃんのお弁当はいつもおいしそうだ。
私は購買で買ってきたハムカツサンドをひと口齧って、ジュースで流し込むと、こくりと頷いた。
「うん。自信ないけど、すごくドキドキしたんだぁ。気づいたらやるって言っちゃってた」
私の手元からぽろりとこぼれたサンドイッチのかけらを、直ちゃんがティッシュで拾って包みこむ。
直ちゃんの隣に座っているアヤが、コンビニで買ってきたらしいパスタをぐるぐる巻きながら、ニヤニヤと笑った。
「はー、あのノンが恋に目覚めたかぁ。ノゾムくんって可愛い系が好きなのか。意外と押せ押せだし」
「そんなんじゃないってばぁ」
アヤがからかうので、私の身体はまたかあっと熱くなった。
昨日からずっと熱い気がする。
もしかすると、この冬はすごく暖冬なんじゃないかと思った。