Hello,僕の初恋






放課後の教室からは、夕焼けに染まった街が見下ろせる。



校庭のそばに植えられたイチョウの向こうで、真っ赤に染まった葉をつけた樹たちがさわさわと揺れていた。



この紅葉もじきに散ってしまうんだろう。

観光客のピークも先週までかもしれない。



県道の向こうには昨日歩いた長い階段が見え、その中腹にある小さな公園でも真っ赤な葉っぱたちが揺れていた。

駅のホームに特急電車が入っていくのが見える。



街のあちらこちらからは、温泉の湯けむりが立ち上がっていた。

きっとあの特急列車からも、温泉への観光客がたくさん降りてくるのだろう。





そんなことを想像しながらも、私はとても緊張していた。

帰りのホームルームが終わって二分、

クラスメイト達がたくさん残っている教室の窓際で、私はひたすら外を見て心を落ち着けていた。



そんなことをしたところで、落ち着けるはずもない。

ノゾムくんたちが私を迎えにくるからだ。
< 65 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop