Hello,僕の初恋



「ノン、緊張してんでしょ~?」



アヤが私の顔を覗いて、そんなことを言う。

美羽は私の隣の席で、鞄に荷物を詰めていた。

どうやら直ちゃんは、早々と部活に行ってしまったらしい。



「からかわないでってばぁ~」

「にひひ。どうなったか教えてよ?」



アヤにそう言われて、私はこくりと頷いた。

隣のクラスの子たちが、廊下を駆けていくのが見える。

きっともうD組も終礼が済んだ頃だろう。



「花音ちゃん、いる?」



優しい声がきこえて、私ははっと顔を上げた。

クラスの端からキャーと声があがる。



今朝登校した時には私とノゾムくんのことがすっかり噂になっていて、クラスメイトに根ほり葉ほり聞かれたのだ。

その直後でご本人のお迎えとくれば、周りが騒がないわけがない。



私はすっかり参ってしまった。

メンバー全員で迎えにくると思っていたからだ。



けれども、いやな感じじゃなくって、ただドキドキと身体が脈打っているのが分かった。



「ノンー! お迎えきたよー!」



クラスメイトの誰かが叫ぶ。

アヤと美羽に「頑張れ!」と背中を押され、私は教室前方のドアへと駆けていっ
た。

暑いからコートは羽織らずに、腕にかけていく。
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