Hello,僕の初恋
恋の音
ノゾムくんたちが時々練習に使っているという音楽スタジオは、駅前通りを渡った先の賑やかな場所にあった。
初めて訪れるその建物に、ノゾムくんのあとについて足を踏み入れる。
受付で話をしているノゾムくんの後ろに立って、きょろきょろと周りを見回した。
「予約五時半からだけど、空いてるからもう入ってていいっすよ」
受付のお兄さんがそう言うのを聞いて、ノゾムくんは満面の笑みでお礼の言葉を述べた。
楽器ケースを背負った彼の後を追いかけて、『B』と書かれた部屋に入る。
中は思ったよりも広くって、ドラムやキーボード、それから大きなアンプなんかが設置されていた。
おじいちゃんの音楽部屋にあったものより、もっともっと大きなアンプだ。
興味深く室内を観察する私を見て、ノゾムくんが柔らかく笑う。
高校生なのにこんな立派なスタジオで練習するなんて、やっぱり彼らは雲の上の存在だな、と思った。
「ちょっと、聴いてみる?」
ノゾムくんがそう言ったので、私はこくりと頷いた。
楽器ケースから出てきた緑色のベースに何かの線が繋がれて、その線の反対側が壁側のアンプに接続される。
ノゾムくんはベースを肩からかけて、アンプの設定を少し弄っていた。