乙女ゲームオタクな私が妹の婚約者と結婚します!
遠堂さんのほうは私を呆れた目で見ていた。

「あんなにご両親が喜ばれるなんて本当に友達がいないんですね」

「遠堂。月子お姉様になんてことを」

「ご両親の騒ぎように感想を言ったまで」

ずいぶんと辛口な感想だけど、その通りなので何も言い返せなかった。

「マンションの鍵を渡しておきますね。明日、私と一緒に楠野に出勤しましょう」

「は!?詩理さんを働かせるつもりですか?」

「木は森の中に隠せって天清(たかきよ)さんが言っていたので」

「天清さんがそうおっしゃるのであれば」

私の言葉なら、簡単に引き下がらないくせに遠堂さんは天清さんと聞いて、あっさり引き下がった。
その天清さんは仕事らしく、帰ってきてからずっと海外にいる人と連絡を取っていて忙しそうにしている。
食事も簡単に済ませただけで、別室にこもったままだった。
遠堂さんと詩理さんを見送って、私も天清さんと実家から二人の新居に戻った。

「明日から忙しくなる」

天清さんは仕事のことで頭がいっぱいなのか、いつもより言葉が少なかった。

「そうですね」
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