乙女ゲームオタクな私が妹の婚約者と結婚します!
不安を消すためなのか、きつく私の体を抱き締めて髪に顔を埋めていた。

「わ、私が天清さんを嫌いになることはないです。それに天清さんのお父様はとてもわかりやすい人だと思いました」

「わかりやすい?」

「お金が大好きなんだなって」

ぶっと天清さんが噴き出して大笑いした。

「ああ、うん、そうなんだ。月子が言う通り、単純なやつなんだよ!」

むしろ、私の妹の響子の方がわからない。
自分で天清さんとの婚約を破棄しておきながら、今日、天清さんの結婚相手候補としてあの場にいることが理解できなかった。
しかも、結婚相手の公康(きみやす)さんはどうするのだろう。

「月子が俺の妻でよかった。月子、俺を離さないでいて」

抱きしめられた腕の中は暖かい。
人の体温はこんなに安心するんだと初めて知った。
泣きたいほどに幸福な気持ちになれることも。

「―――私のことも離さないでください」

「もちろん」

唇が重なり、二人の熱が溶けた。
もう私はあなたとのキスじゃ倒れない。
あなたは私の一番近くにいたい人―――
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