乙女ゲームオタクな私が妹の婚約者と結婚します!
笛木(ふえき)が私をはめたのだ。
月子の企画書はデザートだけで新メニューもサラダバーも企画書にはなかった。
だから、デザートだけでいいと確信したのに!

「二度目はありません」

すっと契約書を前に出した。

「新崎は契約を重視します。ここに一度だけと明記してあります」

ロボットかなにかなの?
抑揚のない声で秘書は告げた。

「それでは失礼します。ここの会計はお支払しておきます」

『バニー』のドリンクバーとチーズケーキ。
その伝票を秘書は手にし、立ち上がると振り向きもしないで店から出ていった。
店員達が私に向ける視線が痛くて長居できず、店から逃げるように出たけれど、行くあてはない。
今さら、実家には戻れない。
両親は『楠野屋』と敵対したことと離婚したことに怒りの電話をしてきて、二度と家の敷居を跨がせない!と言われ、カードも止められた。
両親は私が公康(きみやす)さんに謝罪するまでは許す気はさらさらないようで、連絡もしてこない。
いいわよ!私は月子と違うんだから、行くあてくらいある―――そう、あるじゃない。
行くあてが。

「公康さんなら、きっと私を助けてくれるわ」
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