乙女ゲームオタクな私が妹の婚約者と結婚します!
この人に図々しいとか言われたくなかったけど、面白そうに笑っていたから、平気なようだった。

「わかった。会え。ただし、監視の者は置く」

そんな罪人みたいに娘である詩理さんを扱ってるの?
もしくは所有物を盗まれないため?
言いたいことは山ほどあったけど、今は詩理さんに会うことが先決だ。
新崎総裁が奥に消えたのと同時にお手伝いさんが出てきて、私を案内してくれた。
音もなく、廊下を歩き、『ここです』と言われた部屋の前には黒服のSPが控えていた。
な、なんて厳重さ。
前のようにさらえそうにはない―――むしろ、前科があったから、こうなった?

「詩理お嬢様。楠野様がおみえです」

お手伝いさんがドアを開けると窓際にいた詩理さんが振り返り、驚いた顔でこちらを見ていた。

「詩理さんっ!」

久しぶりに会った詩理さんは少し痩せ、元気がないように見えたけど、私を見て微笑んだ。
懐かしい友達に会ったような―――そんな顔をしていた。
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