乙女ゲームオタクな私が妹の婚約者と結婚します!
「さすがに父のやり方は人としておかしい。皆が疑問に思っている。けれど、父はやめない。なぜなら、ああいうやり方しか知らないからだ。自分も親から自由を奪われて育ったから、それ以外の方法をもたないんだ。俺はそれを変えかった。だから父に引退を迫った。契約書を交わしてね」

「で、でも、それじゃあ、新崎に天清さんはいずれ跡を継ぐために帰るんじゃ……」

「帰らないよ、俺は」

心配?と私の顔を天清さんは笑ってのぞきこんだ。

「父の出した条件は俺が父よりも金を稼げば、引退すると言ってきた」

「そんなこと……不可能じゃないですか!?」

『楠野屋』一つで新崎グループに勝てるわけがない。
なんて不公平な契約だろう。
それをわかっていて、契約した―――

「月子、不可能だとかできないとか思うより、月子には俺がいて、俺には月子がいるんだから、できるかもって思って欲しいな」

「私がいてもなんの役にも立ちませんよ」

「立ったよ。少なくとも、詩理は月子に感謝していると思うよ」

詩理さん―――その名前を聞いて少し自信がついた。

「けどね、月子。俺といる時は他の人の名前を呼ばずに俺だけを見て」

「え?」
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