乙女ゲームオタクな私が妹の婚約者と結婚します!
「えっ!?滝に?月子がそう言うなら」

「冗談ですよっ!!?」

「わかってるって」

あはははっと笑う天清さんだけど、怪しい。
滝にうたれていても違和感がなさすぎて。

「月子はやっぱり面白い」

「はあ?」

「顔合わせの時、覚えてる?」

「え、えーと」

ずっと俯いていたから、わからない。
素直に言うとハートマイナス?
なんて思ったけど、嘘も付けない。

「す、すみません。まったく」

「そっか。残念だなぁ」

ううっ……!
過去の私に言えるものなら、言ってやりたい。
しっかり天清さんを見ておきなさいと!

「夏の暑い日で月子は可愛いワンピースを着て、長い黒髪をおろしていたよね」

「二人で散歩してこいって言われて外に出されたのは覚えてます」

「そう。暑いねって俺が言ったら、慌てていなくなって、戻ってきたと思ったら、水に濡らしたハンカチを渡してくれてさ。黙って、差し出して、また距離を置いて。近寄らなかった」

「は、はあ。そうでしたか」

緊張のあまり、何をしたかも覚えてない。

「その距離感が居心地よかった」

「え?」
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