乙女ゲームオタクな私が妹の婚約者と結婚します!
「さっきも見ただろ?俺が新崎の息子だから、近づいてくる。ただの男なら、きっと興味もない」

「そんなことありませんっっ!」

ババンッとテーブルを叩いた。

「天清さんはかっこいいです!モテモテなのをもっと自覚してください!」

天清さんは笑った。

「月子の贔屓目じゃないかなあ」

「違います!」

「それじゃあ、月子の好きなキャラとどちらが上?」

ぐっと言葉に詰まった。
龍空(りく)様と天清さん?
しばし、沈黙し、苦しげに言った。

「……天清さんです」

「月子。即答するとこだよ!」

「す、すみません。つい」

「これはお仕置き案件だよ、月子」

天清さんは悪い顔をして、顎をつかんだ。

「天清さんっ!居心地のいい距離感はどこに行きましたか!?」

「もっと居心地のいい距離を知ったってとこかな?」

そう言って、両手の指を絡め、重なりあうように倒れた。
か、観光はっ!?滝はっー!!
それにイチャイチャしないって言ったのに―――!

「俺の本当の姿を知っても手を離さないでよ、月子」

そう言って、きつく絡めた指を握りしめた。
私が手を繋ぐことを躊躇ったことを天清さんは見逃さず、気づいていたようだった。
なにか言う前に問答無用で唇を奪われ、言葉どころか声まで消され、天清さんの獣のような本性を初めて知ったような気がした。

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