乙女ゲームオタクな私が妹の婚約者と結婚します!
詩理(ことり)さんも辛そうな顔をしていたけれど、そばにいる遠堂さんになにか言われて、小さく笑ってうなずいていた。
どうして、あんな風になってしまったのか、聞くことは私にはできない。
なにも聞かずに私も黙ってその姿を眺めて、目を伏せた。

「きっとお元気になられますよ」

「そうですよ。天清さんのご活躍を耳にすれば」

励ますように周囲が声をかけ、天清さんは息を吐き出した。
父親に引退を告げたときよりも緊張していたのか、作り笑いを浮かべていた。

「ありがとう」

「天清さん、そろそろ」

遠堂さんがちらりと私を見た。
どうやら、私の泣きそうな顔に気づいていたらしい。
私の顔を見て、天清さんは屈託ない笑みを浮かべた。

「今から、新崎のトップとして命じる。俺の妹の詩理(ことり)を新崎の跡継ぎとし、その伴侶を遠堂をとする。新崎グループの経営は今後、遠堂が取り仕切る」

遠堂さんを除く、全員がポカンとして天清さんを見詰めていた。
思いは皆同じ。
『この人はなにを言っているのだろう』だった。

「天清さんはどうなさるおつもりですか!?」
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