乙女ゲームオタクな私が妹の婚約者と結婚します!
第44話 危険な男【響子 視点】
またバイトをクビになった。
おかしい。
こんなはずではなかった。
コンビニでお弁当を買ってアパートに戻った。
木造の古いアパートにはほとんど人が住んでいない。
最初は友達の家を転々としていた。
けれど、私にお金がないとわかると追い出して、態度も冷たくなった。
私の力なら、こなせるはずなのに!
そうよ、きっと妨害されてるの。
例えば―――

「犯人は月子よ!!」

「そんなわけあるか」

新崎(あらさき|天清《たかきよ)》!!」

「今は楠野だ」

突然の出現に思わず、フルネームを叫んでしまった。
アパート前の古い電灯に照らされて、仕事だったのかスーツ姿で立っていた。
秘書もいる。

「何の用よ……」

低い声、冷めた目と威圧感。
誰、これ―――その雰囲気から察して、いい話とは思えない。

「ここに来たのは君の処遇を決めるためだ。楠野のお義父さんが俺に君のことを俺に一任した」

「は、はぁ!?どうして、あなたが!?」

「本当に皮肉な話だよ。実の娘よりも俺の方が信頼されるなんてね」

胃の辺りがずしりと重くなった。
今の私の言葉を両親はまったく聞き入れてはくれない。
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