乙女ゲームオタクな私が妹の婚約者と結婚します!
企画開発部で働いていて、女性雑誌の読者モデルをしているだけあって姿勢もいいし、歩き方も堂々としている。
どこにいても華やかで目立っていた。
「やっぱり妹のほうが可愛いな。あれだけ、可愛いと自分が捨てた婚約者に話しかけても嫌味がないというものだ」
「新崎の長男は変わっているって話だ。本心では社長もそんな男に自慢の娘を嫁がせたくなかったんだろ」
明るくて可愛いい人気者の妹は部長からも大絶賛されていた。
私と違ってなにをやっても許される。
昔からそうだった。
天清さんはそんな響子を見て、きっと私と結婚したことを後悔している最中に違いない。
もうここまで見れば十分だ―――いつものように地下室にこもろう。
そう思って、そっと地下室へ続く階段を降りようとしたその時。
「えーと?誰だっけ?」
天清さんのその一言でしんっと会社のロビーが静まり返った。
あまりの静けさに息をするのもためらうくらいに。
朝の出勤時間帯で人が大勢いたにも関わらず、物音一つしない重苦しい静寂を破ったのは響子だった。
「冗談でしょ?あなたの婚約者だった響子よ?あの地味でなんの取り柄もない月子の妹!」