乙女ゲームオタクな私が妹の婚約者と結婚します!
『月子さん、すごく綺麗な方だったんですね』
『髪型や服装で印象が変わりました』

なんて、この私が月子の褒め言葉を私が延々と聞くハメになるなんてね。
もちろん、笑顔で聞いてあげた。
でないと、明日には『響子さんが嫉妬していた』と社内に広まっては面白くない。

「それに地下室まで改装するなんて信じられない!あんな金払いのいい男なら、結婚しておくんだったわ」

お見合いの席で現れた彼は海外から帰ってきたばかりで貧乏臭いバックパッカー姿だった。
リネンのタイパンツをはき、タンクトップ、頭にはターバンのようにスカーフを巻き、足元はサンダル。
父親は『さすが豪快な方だ』と気に入っていたけど、私は隣に立つのも嫌だった。
そんな人と私が結婚するわけないでしょ!
私が結婚したのは私に忠実な男。
お願いはなんでも聞いてくれるし、私を手に入れるのに必死になってくれたから。

「今日はあいつが残業でいないから、不便だわ」

お弁当屋でお弁当を買って、ビールを飲みながらテレビを見ていた。
楠野家を出るんじゃなかったわ。
お手伝いさんがいない生活ってこんなに大変だとは思わなかった。
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