乙女ゲームオタクな私が妹の婚約者と結婚します!
優しくされたら響子に奪われた時、どれほど大きなダメージを受けるかわからない。
天清さんの手のひらが額をなでた。

「眠ったらいいよ」

優しい声に泣きたくなって、目を閉じた。
車の外は人が多いのにここは静かだ―――ゆっくり息を吐いた。

「天清さん。これからどうされます?もう帰りますか」

「いや、一か所だけ寄ってくれ」

天清さんの言葉に私は目を開けて、顔を見た。
まだデートは終わってなかった?

「どこに行くんですか?」

「月子が喜ぶ場所」

「……私が?」

家の中と押入れ以外に私の安住の地があっただろうか。

「着くまで休んで」

天清さんの暖かくて大きな手のひらが目を覆った。
―――安心する。
野良猫が懐くのも無理はない。
眠れなかったけれど、さっきまでの体調の悪さが手のひらから伝わる体温で溶けて消えていくような気がした。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


私が喜ぶ場所―――そう言われて着いたのは郊外の木々に囲まれた静かな場所。
白い建物にステンドグラス、木枠に囲まれたガラス窓、十字架。
教会前に立ち、私はぶるぶると震えた。
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