乙女ゲームオタクな私が妹の婚約者と結婚します！
名前を呼ばれ、ハッとして目が覚めた。
―――夢だった。
泣きながら、目が覚めた。
目の前には天清さんがいて、肩を掴んでいた。

「……月子？うなされてたから、起こしたんだけど、悪い夢でも見た？」

天清さんは起きていて隣で寝ころんだまま、仕事をしていたらしく、枕元には書類があり、紙の上にペンが転がっていた。
目が覚めても夢の余韻が残っていて、胸が苦しい。
ここに天清さんがいるから、大丈夫だと、あれは夢だとわかっているのに涙が止まらなかった。

「たっ……天清さっ……ん、皆、私の事が嫌いなんです……」

「皆じゃないよ。俺は月子の事、好きだよ」

天清さんは笑った。
その言葉と笑顔は悪夢を吹き飛ばすだけの威力があった。

「夢だよ。こっちが現実」

「そう……みたいです……」

熱のせいで悪い夢を見て寝ぼけていると思ったらしく、髪を優しく撫でてくれた。
髪を梳く手が心地いい。
そうだ。
私はもうあの頃の私じゃない。
今はちゃんと自分の気持ちだって言える。

「私も……天清さんのことが好きです」

天清さんはいつものように明るい笑顔を見せてくれた。
それだけで、私は安心して眠れる。
結婚相手が天清さんでよかった―――心からそう思えた。
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