乙女ゲームオタクな私が妹の婚約者と結婚します!
みんな、そんな風に思ってくれているんだ。
部屋に戻り、『ときラブ』を手にした。
私もとうとう乙女ゲームは卒業する時が来たのかもしれない。
段ボールに封印するしか―――ない?


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


―――って、気づくと特装版を一周してしまっていた。
な、なにやってるのよー!私は!
最後の見納めか……なんて、感傷的になってしまって、つい……。
このシーンがよかったとか、ここのセリフはキュン死ものだったわとか。
『ときラブ』の良さを改めて思い知っただけでした―――完。

「ただいまーって、月子!?どうして床に倒れて!?」

「いえ、気にしないでください。己の未熟さと心の弱さを猛省しているところですから」

「猛省?修行僧みたいなこと言うなー。そんな悟りはいいからさ。じゃーん、月子!これ見て。お弁当企画が通ったよ」

「本当ですか!」

「明日から、試作に入ろう」

「はっ、はい!」

渡された会議の議事録にはまずはオフィス街から展開し、反応を見ることやインスタ映えを狙った華やかなお弁当にし、『楠野屋』ならではの野菜たっぷりのヘルシー路線でいくことなどが決められていた。

「楽しみですね!」
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