乙女ゲームオタクな私が妹の婚約者と結婚します!
母屋が一番広いけど、離れも普通の家一件くらいの広さはあるし、お茶を嗜む専用の茶室まである。
重厚な雰囲気に上品な邸内。
学校の社会見学でみるような文化財みたいなお家だった。

「月子」

「はい?」

「父に何を言われても俺を信じてほしい」

「何を言われるんですか!?」

「たぶん、父は月子に俺と別れろと言うと思う」

別れろ?
結婚したばかりなのに?
相手が私だから?
そんな話をされるとは思ってもみなかった私は廊下を歩く足を止めた。

「俺は別れたくない。月子が決めることだってわかっているけど、それだけは覚えといて」

天清(たかきよ)さんも足を止め、私を振り返った。
苦しげで悲しそうな顔していて、このイベント回避だけはできず、どうしようもできないことなんだってわかった。
そんなに大変な人なの?
天清さんのお父さんが最大の障害になるなんて、思ってもなかった。
だって、私が思っていた障害は―――

「月子、外を出歩けるようになったの?」

そう。妹の響子でって!?

「響子!?どうしてここに!?」

「天清さんのお父様にご招待いただいたの。新しい結婚相手の候補者としてね」
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