乙女ゲームオタクな私が妹の婚約者と結婚します!
「新崎に利をもたらした者だけが新崎の人間として相応しい。それだけの話だ」

「新崎にだけ利益を与えるなんて不公平じゃないですか?『楠野屋』は新崎の子会社じゃないのに……」

「小さなチェーン店くらいどうなろうが知ったことではない」

「俺は新崎を継がない。だから、意味ないよ。行こう。月子」

睨み付けて天清さんは立ち上がると私の手をとった。

「そうだな。娘の嫁ぎ先がどこか教えてやろうか」

握った手に力がこもり、天清さんの顔が険しくなった。
その嫁ぎ先が良くないものだとわかる。
妹さんは暗い表情をして、うつむき、じっと耐えていた。
以前の自分と重なって、思わず口を挟んでしまった。

「ひ、酷すぎます!悪人にもほどがあります!ゲームの悪役ですら、そんな酷いことをしませんよっ」

「月子お姉様……」

天清さんの妹さんはとても可愛くて、私にすがるような目をしていた。
大きな目に涙をためて。
う、うわあ。
私のことをお姉様なんて呼んでくれるんだ。
それに妹ってこんなに可愛いの!?
しかも、私は今まで人に頼られることなんて一度もなかった。
その感動が最高潮にきて、がしっと手を握った。
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