Kiss Me Kitty! ~年下猫系男子とゆる甘アパート生活~
比菜子は反射的にドアノブに手をかけ、ガチャガチャと回した。
すると、予想外に簡単に開く。
(おバカ! 鍵開いてるじゃん!)
こうなりゃしかたない、と思いっきり開いて中に押し入った。
扉を開けると、そこは──。
たしかにそこには昨日の美男子がいたのだが、全く想像していなかった光景が広がっていた。
「な、なんじゃこりゃ……!」
部屋には家具もなければカーペットもなく、それどころかカーテンすらない。
五帖のむき出しの床があるだけで、それは比菜子が三か月前に越してきたときに見ただけの、薄汚れたなにもない部屋だった。
「ちょっと!」
「……ハァッ……寒い……熱い……」
その、なにもない部屋の真ん中に、ツカサは丸まって横になっていた。
昨日着ていたジャージのまま、ファーのついた上着を一枚かけて苦しそうに唸っている。
大量の汗をかき、顔は真っ赤である。
「バカ! なにやってんのよ」
「……うう……頭いてぇ……」
彼はつらそうに首をもたげて比菜子の顔を見上げたあと、その首をゴロリとまた板の床に預けた。