Kiss Me Kitty! ~年下猫系男子とゆる甘アパート生活~
比菜子は薬箱を取り出し、ストックしていたマスクを自分につけて、目の前の患者より先に風邪薬を飲んだ。
(こっちまで風邪引いたら、私の方は誰にも助けてもらえないんだからね)
いつだったかインフルエンザになりタクシーで病院に行ったことを思い出し、瞳が潤む。
(なにがあったのかは知らないけど。昨日はひとりで苦しんでたのかな)
そっと彼の前髪を指で分けてみると、いつの間にかぐっすりと眠っていた。あの鋭いつり目の猫みたいな顔は、今は安心したのか、あどけない表情に変わっている。
「……ツカサくん。起きたらご飯たべて、薬飲みなさいよね。シャワーも浴びて、ちゃんと着替えて」
眠っているツカサの頭を撫でながら、比菜子はしばらく彼の顔を眺めていた。
(……あれ? なんだか私、この猫拾ったみたいになってない……?)
──今さら気づいても、もう遅かった。
突如襲来した猫系年下男子ツカサくんは、いったい何者なのか?
それがわかるのは、もう少し先のお話。