Kiss Me Kitty! ~年下猫系男子とゆる甘アパート生活~
「た、高かっただろ。あとで返すからな」
「いーのいーの。これはバイトに受かったお祝いなんだから」
「……買ったときはバイトに受かったこと知らなかったくせに」
遠慮しているツカサより先に、フォークにクリームを乗せてひと口運ぶ。比菜子はこれが至福の時とばかりに「んー! おいひい!」と溢れる頬を押さえた。
「細かいことはいいでしょ。受かってなかったら入居祝いって理由にしてたから」
「……比菜子って」
「ん?」
「や、優しい、よな」
(えっ)
予期せぬ言葉に、比菜子はフォークを咥えたまま赤くなる。
「助けてくれるし。なんもできない俺にも、怒らないでちゃんと教えてくれるし」
「そ、そんなことないよ。だって初めてのことができないのは当たり前でしょ? できるかできないかはやってみなきゃわからないもの」
「そんなこと言ってくれるの、比菜子だけだ」
「へへっ」と声を漏らしながら、ツカサはふわりと笑った。
とろけるショートケーキのようなその笑顔に、比菜子は思わず釘付けになる。
(……ツカサくんって、なんだか、すごく……)
口いっぱいに、クリームの味が広がる。
(……甘い)