Kiss Me Kitty! ~年下猫系男子とゆる甘アパート生活~
第4話 婚約者は突然に
お隣さんになって、一か月が過ぎようとしていた。
【チェリッシュでテイクアウト用のソースもらったから、今日持って帰る。比菜子も仕事がんばれよ】
(へへへへ……)
「浅川さん、なんだかご機嫌じゃないですか?」
金本は、隣のデスクに座る先輩である比菜子の顔を覗き込んだ。
スマホ画面を見て目尻が垂らしていた比菜子は、言い当てられてハッと姿勢を正す。
「な、なんでも」
「そうですか? 気になる人とメールしてるか、猫ちゃんの写真でも見てるのかと思いましたけど」
(げ、鋭いっ)
比菜子は金本の言葉にギクリとしたが、同時に「ん?」と疑問符を浮かべる。
(いや、気になる人じゃなくて、猫よ、猫。六つも年下の大学生を、さすがに男として意識しないって)
そう言い聞かせ、ウンウン、と心の中でうなずいた。
金本の薬指を眺め、気を引き締める。
(いくらツカサくんがかわいくても、私にはもう不毛な恋愛をしてる余裕はないんだから。浮かれちゃダメ)