Kiss Me Kitty! ~年下猫系男子とゆる甘アパート生活~
(学生同士、お似合いのカップル。……こんな婚約者がいるのに私の部屋に出入りしてたなんて。なに考えてるのよ、ツカサくん)
悔しさでバッグの持ち手が音を立てる。
ツカサへの苛立ちが止まらないが、それを飲み込んでうつむいたまま、地面を睨んだ。
「有沙、お前比菜子となに話してたんだ? 失礼なことしてないよな? 世話になってる人なんだから変なこと言うなよ」
(どの口が言ってるの)
「言ってないもん」
(めちゃくちゃ言ってたわ)
「比菜子」
突然名前を呼ばれ、比菜子は「へっ」と間抜けな声を漏らした。
もうアパートへ入ってしまおうかと一歩踏み出していた足を慌てて戻し、余裕があるフリをして振り返る。
「これ、幼なじみの有沙。俺の一個下」
ツカサは、親指で有沙を示した。
(幼なじみ……)
〝婚約者〟と言わなかったツカサを、比菜子は再び不信感の募る目で睨む。