Kiss Me Kitty! ~年下猫系男子とゆる甘アパート生活~
比菜子は言い返したくてたまらなくなった。
(ツカサくんは素直でがんばり屋だから、なんだってできるのに)
しかし相手は幼なじみで婚約者。少し同居しただけの自分よりもツカサのことをよく知っているはずなのだ。
比菜子は悔しくも言葉を飲み込んだ。
「心配かけて悪いな有沙。俺のことは少し放っておいてくれ」
「ツーくん……」
「どうせどっかに爺やもいるんだろ? 気をつけて帰れよ」
ツカサは比菜子に「行こうぜ」と声をかけ、共用玄関へと促す。
比菜子は肩を落として立ち尽くしている有沙を一度振り返り、複雑な気持ちになった。
(……本当に婚約者?)
次に、有沙を一度も振り返らなかった隣のツカサをちらりと見る。
『俺はここが気に入ってるから』
(ツカサくん……)
傷ついていたはずの胸がかすかに甘く鳴った。