Kiss Me Kitty! ~年下猫系男子とゆる甘アパート生活~
「そうですか?」
「はい! いつもひとりで帰ってますから!」
「ひとりで? それは危ない。比菜子さんすごくかわいらしいから誰かに狙われそうだ」
「へ!?」
穏やかな笑顔のままそんなことを言う戸崎に、比菜子は一歩後退りをした。
(ダメダメ! わかってるんだから! この人軽い気持ちで言ってるだけだって!)
わかっていても、渡されたハンカチや彼の聞き心地のよい言葉には、傷ついた心をスッと癒すような力があった。
「あの、て、店長さん……」
「さ。行きましょう」
差し出された戸崎の手をしばらく取らずにいると、やがてその手は動き、宙で迷っている比菜子の手に向かった。
掬い上げるように指先同士が触れ、拒否できずに握り合ってしまいそうになる。
(……ダメだ……なんか、拒めない……)
そのとき──
「触んな」
パシンと音を立て、彼女の手は間を割るようにして伸びてきた別の手に取られた。