あやかし戦記 ネバーランドの子どもたち

笛の音

イヅナの潜入が始まって早数日、イヅナは床に寝転がり、ぼんやりとした頭で薄汚れた天井を見上げていた。

潜入してから、一日の流れはいつも同じだ。決まった時間に三食ゴブリンたちに食事をもらい、一日に十五分ほど檻の外に出してもらって運動をする時間がある。運動と言っても、足に枷がつけられておりただ何もない狭い部屋を見張り付きで歩く程度なのだが。

基本的には檻の中で一人で過ごすことになり、その孤独が苦しくなってしまう時がある。檻の外から叫び声やうめき声が聞こえてくるたびに、狂ってしまうのも仕方がないとイヅナは目を閉じた。

誰とも関わることはなく、孤独の中いつ出荷されるかわからない恐怖が襲いかかってくる。イヅナの心も日に日に悲鳴を上げているような気がした。

「ッ！大丈夫、大丈夫よ。ここにはツヤさんもいるわ。きっとレオナードたちが助けてくれて……」

心が壊れそうになるたびに、イヅナは体を震わせながらも前向きな言葉を口にし、恐怖を誤魔化す。覚悟をしていても、怖いと感じてしまうことは仕方がないのだ。