籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】
「そうなの?事実じゃない噂って嫌じゃない?」
「そりゃいい気はしないけど。あ、土浦さんに迷惑がかかるのは嫌だよ。でも彼もそんな噂話どうでもいいって人だと思うし…それに来月籍入れることになったからそのうち報告すると思うから」
「ほう…はすみって見た目と違ってさっぱりしてるよねぇ」
「見た目と中身が違うのは夏子の方じゃない」
「え?何が?」
昼休みは夏子と楽しく会話をしながら食事をとった。
噂話に関しては本当にどうでもよかった。信じる人は信じるだろうけど、だからと言って別に仕事が出来なくなるわけでもないしそれによって嫌がらせを受けているわけでもない。
自分のフロアに向かっていると、専務室から藤沢千佳が出てくるのが見えた。
「…あ!先輩!」
すぐに私に気が付くのは彼女の才能なのかもしれない。
センサーか何かがついているのだろうか。小走りで駆け寄ると、いつもの可愛らしい声で私の名前を呼ぶ。どうして和穂さんの部屋から出て来たのか不明だが、総務部で何かあったのだろうか。普通ならば秘書課を通すはずだ。
「先輩!お疲れ様です!」
「お疲れ様…」
「あのご報告していいですか」
「…なんの?」
「私、孝太郎さんと別れました…なんか違うなって、」
「は?」