籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】
「なんか違って…なので一応ご報告です!あ、でも先輩にはもう関係ないですよね。もう少しで結婚するんですよね。いつ籍入れるんですか」
「…いつでも、いいでしょ」
私はこれ以上彼女と会話を続ければ、怒りでどうにかなってしまうと判断した。
そして、孝太郎と奪うようにして付き合ったくせに簡単にゴミのように捨てる彼女が心底許せなかった。孝太郎のことを本気で好きだったのだろうか。それすら疑問だ。
床に視線を落として唇を噛み締めると彼女の脇を通り過ぎる。
「私、好きな人が出来たんです」
「…」
しかし背中に投げかけられた言葉に思わず足を止めそうになった。振り返らずに自分のフロアに戻る。
―好きな人が出来た
そういえば、孝太郎と婚約している時も同じようなセリフを言われたのを思い出す。
彼女が総務部なのにも関わらずどうしてか専務室に出入りしているのは…―。
「まさか、」
彼女の好きな人が和穂さんなのでは、と思った。いや、思ったというよりも確信に近い。
気づけば和穂さんのことばかり考えているのは、私の方が彼に惹かれているからかもしれない。そして未だに彼に好きだと伝えることはしていなかった。