籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】
こういったパーティーにはそれなりに出席してきた。だけどあくまでもそれは”親がいる”状態だったから責任感のような大きな何かを背負う感覚はなかった。
今は常盤和穂の妻として、この場にいる。
表情筋が引き攣りそうになるのを感じる。
出来れば両手で頬を解したいくらいだ。会場は既に大勢の招待客で埋め尽くされている。
友人の結婚式に出席した経験は何度かあるがそれ以上の規模だ。一体どれほどの大企業のトップが集まっているのだろう。
和穂さんはすぐに見つけることが出来た。
オーラが違うのだ、初めて会った時に感じたことだ。どこにいても彼だとわかる。
長身でスラっとしたモデルのような体型に彫刻のように目鼻立ちのはっきりした顔、自信が滲む喋り方、どれをとっても極上の男ではないか。遠目で見ると自分の夫になる人だとは思えない。
その圧倒的な空気を纏う彼のせいで足が止まる。
しかし、すぐに彼の視線が私に向く。
「…」
慌てて会釈をし、近づく。10センチ以上あるヒールは履きなれていないから歩くスピードが遅い。それでも笑顔を崩さずに堂々と歩いた。
和
穂さんの隣に並ぶとヒールを履いていても身長差が際立つ。
彼は早速目の前のご夫婦に私を紹介した。
「彼女は来月結婚する予定の妻です」
「お初にお目にかかります、はすみと申します」
ご夫婦は身に着けているアクセサリーや時計、ドレスどれを見ても高級品であることは一目瞭然だったから相当社会的地位の高い方々だと想定できた。