籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】

「失礼ですが以前どこかでお会いしましたか?」
「いいえ、今日が初めてです」

 表情は笑っているはずなのに目が笑っていない。それがヒシヒシと伝わってくるからなのか、これ以上関わりたくないと本能的な部分で感じる。

「私は…和穂さんと婚約する予定でしたので」
「…っ」
「顔合わせもないまま、常盤家の方からこの縁談はなしにしてほしいと言われました。まぁ元々私たちから常盤家の方に縁談の話を持ち込んだのですが…理由を訊くと他の女性を婚約者として迎え入れたいと」
「それは、」
「ええ、あなたです。佐伯さん」


 一歩ずつ後ずさる。スピーチ中の和穂さんに全員の目が向いている。

「だからお会いしたかったのです、あなたに」
「そうですか…、あの私ちょっとトイレに」

彼女に背を向けようとすると華奢な見た目とは裏腹に強い力で肩を掴まれた。

「もう少しお話しましょう?」
「いえ、あの…お話することはないので」
「私の方が和穂さんのこと好きなんです。どうしてあなたなんですか」
「そんなの知りません!」


本人に聞いてくれと言いたいのをぐっと抑え何とか彼女を振り切って会場を出ようとする。
でも握力がいくつあるのか問いたいほど強い力で肩を押さえつけられる。

バランスを崩して倒れそうになった。
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