籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】
…―…


 両親の勧めで入った会社は大手五大商社の中の一つ、常盤物産の完全子会社である食品会社だ。

常盤物産といえばだれもが知る総合商社だ。
 しっかりと面接を受けて勝ち取った合格だと思っていたが、今思えば佐伯家とも取引のある常盤物産には最初から“佐伯家の長女”という情報が送られていたのではないかと思う。
つまり、最初から出来レースだったのかもしれない。

 他の優秀な学生がいるとしたら私のせいで枠が一つ減ったのだから本当に申し訳ない。

 そういった経緯もあり、仕事は全力だった。
誰よりも努力をして“親のお陰で入社させてもらった“というレッテルを払拭したかったという思いが強い。

 そのお陰で評価もよかった。

 現在私は常盤食品株式会社の人事部に配属されていた。
孝太郎とも同じ部署で出会い、現在彼は異動して同じビルの営業企画部法人チームにいる。

 そしてその浮気相手である藤沢千佳は総務部にいる。
同じフロアにいるからほぼ毎日顔を合わせることになる。孝太郎とは階が違うからまだマシだ。

 孝太郎と付き合っていたことは周りにも周知の事実だった。
もう少しで結婚することも少なくとも同じ部署の人達は知っている。
< 12 / 154 >

この作品をシェア

pagetop