籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】
「どうしてそれを…」
「どうしてって専務から直接言われた。釘をさされたって感じ。“彼女は俺の妻”だからって。勘違いされたら困るけど俺は佐伯さんを狙ったことは一度もないし、そういう目で見たこともないし、そもそも彼女なんていらないし」
「…そこまで言わなくても」
「いや、勘違いされたくないからハッキリ言った」
和穂さんがどういうわけか第一秘書である土浦さんに私との関係を伝えたようでそれはそれで複雑な心境だ。だって私と和穂さんが二人でいるところを他の社員が見てもそれは秘書と専務の関係だとわかるだろうけど土浦さんには男女の関係があることを知られた上で接するわけだから…。
「恥ずかしいな…」
「総務の子とは何もないの?」
「あ、藤沢千佳さんですよね。専務からは何も聞いていません」
「へぇ、何かあれば俺らを通すってことしらねぇのかよ」
「…こわ」
単調な声だったが普段の彼は絶対にしないような言葉遣いに戦きながら業務に当たった。
千佳が和穂さんに接触しているのは確かだ。
それを土浦さんも見ているのだから、益々不安は募っていく。彼を信じている、だけど…―。
どうしても孝太郎の件が心を不安定にする。