籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】

安いが普通に美味しいと感じた。

「専務、」

土浦が俺を見据える。


「俺は佐伯さんのことは何とも思っていません」
「それはよかった」
「ただ、確かに彼女は面白いですね。コミュニケーション能力も高いし、誰とも壁を作らずに接することが出来る。なかなかいない人材だと思います。唯一欠点があるとするならば、顔に出やすいということでしょうか」
「…へぇ、なかなかいい分析だね。業務では一番関わりがあるのだから、当たり前と言えばそうなのかもしれないが」


 やはり牽制しておいてよかったと思った。

もしも彼女が俺の婚約者だと知らなかったら、土浦だってはすみのことを好きになっていた可能性もあるわけだ。もしかして既に惹かれているということも考えられる。

はすみが新しい箸を持って俺の隣に座る。

 先ほどまで無邪気な笑みを土浦に見せていたくせに俺が近くにいるとなると途端おとなしくなるのは何故だろう。

「どうして専務がここに?」
「たまたま君たちが一緒にいるところを見たんだよ。それで初めて社員食堂を利用しようと思ったんだ」
「そうですか…安くて美味しいですよね?」


はすみが無邪気にそう訊く。
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