籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】
「どういうこと…?」
震える声が想像以上に低かったのは、込上げる怒りを必死に抑えようとするのに自身の怒りをコントロールできないほど目の前の現実が信じられないからだ。
せっかくの婚前旅行、彼氏である彼のスマートフォンに映し出されるメッセージを見てしまったせいで全身が凍り付き動けない。
婚前旅行にロンドンを指定したのは私だった。いつか結婚する時は運命の人とこうやって海外を旅行して素敵な思い出を作ることを想像していた。
それなのに…―。
宿泊したホテルのリビングルームでじっとそのメッセージを見つめる。
“いつ帰ってくるんだっけ?早く会いたいなぁ♡”
絶対に友人同士の会話ではない。それに、メッセージの送り主の名前に見覚えがあった。もしかしたら、と思ったがこれ以上絶望したくはなくてぎゅっと強く目を閉じた。
瞼の裏側に映るのは、好きだったはずの孝太郎の顔だった。
「どうした?」
ちょうどシャワーから上がったであろう婚約者である孝太郎が背後から声を掛ける。