籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】

「どうして今日は来てくれたんですか」
「それは、興味があって。どうして見ず知らずのたまたま助けた私に連絡先を教えたのかって。普通はそんなことしないです」
「ナンパじゃよくある」
「ナンパには見えなかったので」
「…」

何か意図があるはずだ。絶対に。

「ところで、はすみさんはどうしてあの場所にいたんだ?観光目的ならホテルは予約してあるはずだし、髪も濡れていた。あの日は一日中天気がよかったのに」
「…それは、」

どうせもう接点も消えるであろう彼にすべてを話しても問題はないように感じた。

「お恥ずかしい話なのですが、一緒に来ていた恋人に振られたんです。結婚まで約束した人で…ロンドンには婚前旅行で行きました。それなのに浮気が発覚して。本人は否定したんですけど…振られたので理由はどうあれ私ではないということでしょうね」
「旅行中に?それはひどい話だ。それで飛び出してきたということか」
「ええ、追いかけてくれるかと思ったら…全く。帰国してから一度も連絡がないし…」

 苦しい感情で胸が押しつぶされそうになるが夏子以外にも話を聞いてもらえて気分が楽になったのもまた事実だ。

「お待たせしました。季節のカクテルです」
「ありがとうございます」

 大き目のグラスに赤いカクテルが目に入る。飲み口にカットされたイチゴが乗っている。
和穂さんと乾杯をして飲む。甘くて美味しいが、空腹にお酒はいくらアルコールに強いとはいえ早めに酔いが回りそうだ。

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