籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】
「あの!ロンドンには本当に仕事で来ていたんでしょうか」
「そうだよ。海外には頻繁に行ってる。だからまさかあんなところで日本人女性に会うなんてね。何か犯罪に巻き込まれたんじゃないかってヒヤヒヤしたよ」
「本当にあの時はありがとうございました。お陰で犯罪に巻き込まれることもなく帰国できました」
「いや、いいんだ。俺にとってはあれはメリットだったから」
「…メリット?」

 訝し気に聞き返すものの彼はそれらをはぐらかした。

「で、彼氏に振られて結婚は白紙になったようだけど家とかは?同棲とかしてたら引っ越ししなきゃいけないよね?」
「…あー、それは…実は、」

 私は苦虫を嚙み潰したような顔をしてマンション解約手続きは済んでいるのに新居が見つからないこと、そのせいで荷物の運び出しは必須だから家具類をどうするのか…など、まだまだやらなくてはならないことが多いことを話した。
彼は視線を空に動かして何かを考えているように無言になった。

「じゃあこれはどう?新居が決まるまで使用していない部屋がある。そこを貸すよ。家具なども別の倉庫を用意する。そこに暫くおいておけばいい。それなら問題は解決だ」
「あの、ご自分が何を言っているのかわかっていますか?見ず知らずの女性にそこまでしますか?」
「もう見ず知らずの…ではない。会うのは二度目だ」
「そうは言っても、」
「でも今のところ住む場所が決まっていないのに退去の日程は絶対なんだろ?だったら迷っている暇はないのでは?」
「…それは、」
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