籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】

「この出会いだって偶然だが、それを運命の相手にするかどうかは本人たち次第だと思ってる。すべてがそうだ、運だって俺は皆平等に訪れると思っている。それを掴むかどうかは本人次第だから」
「…」
「俺は今まで出会ったことがない。運命の相手にしたいような、そんな相手に」
「そうなんですか?」
「そうだね、でも…」

 彼はグラスを傾けて遠くに目をやる。その仕草一つ一つが様になるのは彼が放つオーラのせいか。

「今は興味のある女性はいる」
「…へぇ」

 興味のある女性というのがどういった関係性の人になるのかは不明だけど、彼の言葉はずっしりと重く胸に積もっていく。
 幸太郎は私を運命の相手にしたいとは思わなかった。
どんなに相性が良くても一方だけの努力で成り立つことはない。双方がそうなりたいと思う相手が確かに運命の相手なのかもしれない。


「和穂さんの考え好きです。なんかちょっと楽になりました。本当にどこに勤めてるんですか?一般人とは思えないんですけど」

さぁ?と意味深に笑う和穂さんに益々興味が出てきた。

「で?どうする?使用していない部屋があるから使いたいならどうぞ」
「…家賃は払いますので、じゃあ…決まるまでよろしくお願いします。今月中に退室しなければならないので」

和穂さんはそれはいい選択だ、といった。
彼にとってのメリットは一切わからないでいたが、部屋が余っているということは不動産経営をしている人なのかなと推測した。

 この日は本当に二杯だけ飲んで自宅まで送ってもらった。

しかし私は完全に勘違いをしていた。

”使用していない部屋”の意味を。


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