籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】
後戻りはもちろんできない。ただただこの状況を呑み込むしかない。いきなり出会ったばかりの男性との同居は常識外れだ。
でも、和穂さんなら…という信頼はあった。どうしてそう思うのか自分でもわからない。
和穂さんに手伝ってもらい“新居”に荷物を運ぶ。
このマンションにはコンシェルジュがフロントに配属されている。指紋認証でなければ中に入ることは出来ないセキュリティで、芸能人でも住んでいるのではと思った。
和穂さんの部屋は最上階だ。
なんと6LDKという見たこともない間取りで確かに一人では使いきれない部屋だ。
「…あの、広すぎませんか?」
荷物の搬入を終え、一言目がそれだった。
「そうなんだよ。ここコンシェルジュが24時間体制なんだ。24時間体制のマンションがなかなか見つからなかったから仕方なくここに。まぁそれに、結婚する予定だったっていうのもある。ここに越したのはちょうど結婚話が俺のところに来た頃だったから」
「そうですか…」
「広いし部屋数もあるし会社近くに仕事用の別のマンションも借りているからここに戻ってくる頻度はそう多くはない。だから別に警戒しなくてもいい」
マンションをもう一部屋借りているという事実に目を丸くする。