籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】

 家を飛び出し、ほぼ絶縁状態だったが着信拒否はしていなかった。
数年ぶりの電話に、スマートフォンを握る手の力が強まる。
鳴り続けるそれに意を決して画面をタップする。

「もしもし…」
「はすみ、元気にしてた?」

 それは母親の声だった。意外にも落ち着いた声が出せたのは何度か深呼吸をした後に電話に出たからだろう。母親の声は昔と何も変わっていない。

「どうしたの、急に」
「急に家を飛び出して戻ってこなかった理由を先に聞きたいくらいだけど、何となく想像つくからいいわ。そんなことよりお父さんが手術することになったの」
「え?」

数日前、体調が悪く総合病院に行くとすぐに入院を勧められたようだ。
どうやら脳梗塞を起こしているようで手術をしたらしい。幸いにも後遺症もなく喋れるし歩けるらしいがしばらく入院をするから私も見舞いに来たらどうだという連絡だった。
もちろんすぐに病院に向かった。

…―…


 総合病院に到着してすぐに病室に向かった。
個室のドアをノックして中に進むとお父さんとお母さん、それに仕事関係の人が数人いた。
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