籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】
「冗談を言える状況ではありません。何度も言うけど一度目はあなたが勝手に顔合わせもせずに家を出ていったせいでうちがどれだけ苦労したか既に社会人になっているあなたにはわかるわよね」

「…それは!!だって、顔合わせをして…そのあとにやっぱり嫌ですって断ることは不可能じゃない。どうせ既に決定事項だったんでしょ?だから嫌だったの、どんな人なのかもわからないのに結婚なんて」

「どんな人かわかれば結婚したの?結婚というのは家と家の結びつきよ。佐伯家に産まれた運命なの」

「意味わからない。それに常盤物産の前回の見合い相手がまた私に?怒ってたんじゃないの?」

「ご両親は相当に怒っていたわよ。でも息子さんの方は全然怒っていなかった。うちとは違って教育が行き届いていたようね、しっかり結婚という意味を理解している賢い息子さんだったわ。もう既に違う相手と結婚したと思っていたのだけど、まだ結婚はしていなかったみたい」

 やはりどうやっても両親と私の主張は平行線だ。

赤い口紅の塗られた唇がきゅっと上がった。そしてベッドの上にいる父に目を向ける。
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