籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】

「常盤さんの方から縁談を申し込んできた。次は断ることは出来ない。わかったか?」

父親の目がじっと私を映す。

―結婚

それは、本来であれば好きな人とするものだ。

「…分かった。いつ顔合わせ?」
「来月の中旬だ」
「それってもう決定なんだよね?じゃあ新居とかは?」
「常盤さんに確認するがすぐに一緒に住むことになるだろうからマンションは解約手続きをしておくように」

 分かった、そう短く返事をして病室を出た。
新居を探す必要はなくなった。

病院を出ると空を見上げる。すべてを諦めて生きることは簡単だ。
流されるようにして生きることもまた、簡単だ。

私はずっと願っていた、運命の人と一緒になることを。
 和穂さんに電話をしようとしたがやめた。今日帰宅するかはわからないけど、次に会った時には”来月には出ていく”ということを伝えよう。

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