籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】
―お昼休み
社食で定食を一人で食べていると苦手な声が聞こえる。
「はすみ先輩、お疲れ様です!ここいいですか?」
長テーブルにお盆を置いてハンバーグを口に含んでいると藤沢千佳が耳に髪を掛けてチラリ光る小ぶりのピアスを揺らし許可していないのに私の前に座る。
「ハンバーグ定食ですね!迷ったんですよね~ハンバーグかうどんか」
「そうなんですね」
「そうなんです!!最近ダイエットしてるので」
本当は年下だから敬語じゃなくてもいいのだけれど”あなたとは距離を取っている”という意思を示すために彼女に敬語を使おうと思った。
「…」
きゅっと上がる口角が薄く開いた。
「孝太郎さんとはもう別れたんですよね」
笑顔は崩さずにしかし口調は冷たかった。その声のせいで体が強張った。孝太郎の名前は彼女からは聞きたくなかった。やはり既に二人は付き合っているのだろう。
「うん、別れた。別にいいよ、私別の人と結婚することになったから」
「え?そうなんですか?どういうことですか?だって孝太郎さんと付き合ってたのに。浮気してたんですか?」
「するわけないでしょう。孝太郎とはもう終わったの。誰と付き合おうがもう構わない」
まだ半分以上残っているハンバーグをそのままにして私はお盆を持ち上げて立ち会がる。
これ以上一緒の空気を吸いたくなかった。まるでドラマのワンシーンのような浮気相手との対話に辟易していた。
わざと孝太郎の話題を出したのだろうが、それに狼狽してしまっては彼女の思うつぼだ。
社食で定食を一人で食べていると苦手な声が聞こえる。
「はすみ先輩、お疲れ様です!ここいいですか?」
長テーブルにお盆を置いてハンバーグを口に含んでいると藤沢千佳が耳に髪を掛けてチラリ光る小ぶりのピアスを揺らし許可していないのに私の前に座る。
「ハンバーグ定食ですね!迷ったんですよね~ハンバーグかうどんか」
「そうなんですね」
「そうなんです!!最近ダイエットしてるので」
本当は年下だから敬語じゃなくてもいいのだけれど”あなたとは距離を取っている”という意思を示すために彼女に敬語を使おうと思った。
「…」
きゅっと上がる口角が薄く開いた。
「孝太郎さんとはもう別れたんですよね」
笑顔は崩さずにしかし口調は冷たかった。その声のせいで体が強張った。孝太郎の名前は彼女からは聞きたくなかった。やはり既に二人は付き合っているのだろう。
「うん、別れた。別にいいよ、私別の人と結婚することになったから」
「え?そうなんですか?どういうことですか?だって孝太郎さんと付き合ってたのに。浮気してたんですか?」
「するわけないでしょう。孝太郎とはもう終わったの。誰と付き合おうがもう構わない」
まだ半分以上残っているハンバーグをそのままにして私はお盆を持ち上げて立ち会がる。
これ以上一緒の空気を吸いたくなかった。まるでドラマのワンシーンのような浮気相手との対話に辟易していた。
わざと孝太郎の話題を出したのだろうが、それに狼狽してしまっては彼女の思うつぼだ。