籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】
「そのメッセージは誰から…?」
「これは、同じ職場の藤沢千佳だよ。はすみの隣の部署の」
「…どう、して…?私と結婚するって言ってくれたのは嘘?プロポーズも…嘘なの?」
「嘘じゃ、ない。だけど…」
「嘘じゃないのにどうして?…浮気してたの?今回の旅行だって婚前旅行だったのにっ…」
語調が荒くなる私とは対照的に彼は既に私とは違う方向を見ているようでその目には覇気がない。
すぐにでもこんなやつ忘れてこっちからさようならすればいい。すればいいのに…―。
重力に従うように腕を下ろして脱力させた。
何も気づかなかった自分の鈍感さにも呆れる。孝太郎の浮気相手は同じ職場の藤沢千佳だった。お互いに知っている人物である。
先週も『結婚するんだ?おめでとう』と笑顔で言ってくれたのに、どうして…―。
「別れよう。俺は明日にでも日本に帰る。お互いその方がいい」
「お互い?勝手に決めないでよ…私は、」
まるで私にとってもその方がいいのだと言っているように聞こえた。
勝手に浮気しておいて、私のことを思っているような口調に歯を食いしばる。
先ほどシャワーを出たばかりで髪すらまだ乾かしていないのに私は荷物をまとめた。同じ空間にいることが辛すぎる。
「はすみ、どこに?夜だよ、今日はとりあえずこのホテルに」
「無理に決まってるでしょう?婚約者に浮気された事実があるのに一緒に過ごせるわけない」
「…浮気はしていない。本当だ、でも…―」
孝太郎は何かを言いかけてやめた。「いや、何でもない」と言って視線を落とした。
もっと早くに気づいていたら傷口を浅く出来たのかもしれない。
たらればの話、だ。
私は無言で荷物をキャリーバッグに纏めて、着替えるとホテルを出た。直前になって彼は私の腕を掴んで止めたが追いかけてはこなかった。
「これは、同じ職場の藤沢千佳だよ。はすみの隣の部署の」
「…どう、して…?私と結婚するって言ってくれたのは嘘?プロポーズも…嘘なの?」
「嘘じゃ、ない。だけど…」
「嘘じゃないのにどうして?…浮気してたの?今回の旅行だって婚前旅行だったのにっ…」
語調が荒くなる私とは対照的に彼は既に私とは違う方向を見ているようでその目には覇気がない。
すぐにでもこんなやつ忘れてこっちからさようならすればいい。すればいいのに…―。
重力に従うように腕を下ろして脱力させた。
何も気づかなかった自分の鈍感さにも呆れる。孝太郎の浮気相手は同じ職場の藤沢千佳だった。お互いに知っている人物である。
先週も『結婚するんだ?おめでとう』と笑顔で言ってくれたのに、どうして…―。
「別れよう。俺は明日にでも日本に帰る。お互いその方がいい」
「お互い?勝手に決めないでよ…私は、」
まるで私にとってもその方がいいのだと言っているように聞こえた。
勝手に浮気しておいて、私のことを思っているような口調に歯を食いしばる。
先ほどシャワーを出たばかりで髪すらまだ乾かしていないのに私は荷物をまとめた。同じ空間にいることが辛すぎる。
「はすみ、どこに?夜だよ、今日はとりあえずこのホテルに」
「無理に決まってるでしょう?婚約者に浮気された事実があるのに一緒に過ごせるわけない」
「…浮気はしていない。本当だ、でも…―」
孝太郎は何かを言いかけてやめた。「いや、何でもない」と言って視線を落とした。
もっと早くに気づいていたら傷口を浅く出来たのかもしれない。
たらればの話、だ。
私は無言で荷物をキャリーバッグに纏めて、着替えるとホテルを出た。直前になって彼は私の腕を掴んで止めたが追いかけてはこなかった。