籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】
♢♢♢

 仕事が忙しい日はほとんどこのマンションには帰宅しないのではと思いながら勝手に和穂さんのキッチンを使用していた。

「…はぁ、」

 今日は散々な日だった。
藤沢千佳にマウントを取られて、そして孝太郎にばったり会ってしまった。
簡単にチャーハンと中華スープとサラダを食器や新品同様の調理器具で作りながら一人でブツブツ文句を言っていると急にリビングルームのドアが開いた。

「ただいま」
「ひゃっ…」
「そんなに驚かなくても。ここ一応俺の家なんだし」
「ごめんなさい!今日も帰ってこないかと思って…」

 下は毛玉付きの濃紺のパジャマに上は適当なTシャツを着ていた。
色気は皆無、スッピン状態でチャーハンを作る手を止める。

「いいんだ。好きに使っていい。何作ってるの?」
「あーえっと、チャーハンを…」
「チャーハン?それ一人分?よかったら俺にも作ってほしい」
「ええ?和穂さんも食べるんですか?二人分ありますが…誰かに食べてもらうために作ってないっていうか」
「いいんだよ、君が作ったものを食べたい」
「…」
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