籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】
 彼ほどの人間にこのような適当に作った料理が口に合うのか心配だった。
何となく今日はチャーハンが食べたい気分だったから材料を買って作っただけなのだが、既に顔を綻ばせる彼を見て断ることもできず(そもそも家に住ませてもらっているから)二人分の夕飯を作る。

 和穂さんの家なのに彼がいることに違和感を覚える。
ほぼ使っていないであろうダイニングテーブルに作った夕食を並べる。
和穂さんも用意を手伝ってくれて同棲しているカップルのような雰囲気が部屋を満たしていく。

 チャーハンと言っても凝ったものではないから和穂さんが食べるのをじっと見つめて反応を待った。
しかし和穂さんはすぐに顔色を明るくして「美味しい」と言った。

「本当ですか?」
「本当だよ。チャーハン好きなの?」
「そこまで好物っていうほどではないのですが、今日無性に食べたくなって」
「へぇ、そうなんだ。料理上手だね」

 どんどん口に運ばれるチャーハンはすぐになくなった。
美味しそうに食べてくれる和穂さんに嬉しくなって次も作ろうかな、何て思った。
ありがとう、そう何度もお礼を言ってくれた彼は中身も紳士で素敵だ。

 その日の夜は和穂さんがいるからか一人でベッドの上をゴロゴロしている時でさえ緊張していた。
 彼は既にお風呂に入ったのかなとか、和穂さんの部屋はどのような内装になっているのだろうとか、仕事は何をしているのだろうとか全てどうだっていいのだけど妙に気になった。
それは彼がミステリアスな雰囲気を纏っているからなのだろうか。
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