籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】
何となくシャワーを浴びるタイミングを失い、さすがにシャワーを浴びずに出社するのはと思いそっと部屋から出て静まり返るリビングルームを通り過ぎてから浴室へ向かった。

 ささっとシャワーを浴びて下着姿で洗面台の前に立ち化粧水で肌を保湿する。
今日は会社では最悪なことばかり起こったが和穂さんのお陰で帰宅してからはそれなりに楽しい時間を過ごせた。パジャマに着替えてからリビングルームに行くと和穂さんがミネラルウォーターを飲みながらソファに座っていた。

「シャワー使いました。ありがとうございます」
「いいよ、好きに使っていいから。洗濯も勝手にしていい」
「ありがとうございます」
「どう?せっかくだから少し話そう」
「そうですね」

 もはや警戒心は皆無で居心地のいい空間に身を任せる。
和穂さんの隣に腰かけた。

ブラックのカウチソファはシンプルなこの部屋に良く合う。
カーテンも爽やかなブルー色で、テレビの近くに観葉植物が置いてあった。
和穂さんによるとこの部屋は基本家事代行サービスを利用して掃除してもらっているのだとか。

「良ければ私がこの家に住んでいる間は家事代行サービスは利用しなくていいですよ。私がある程度の家事はやりますから」
「いいよ、君だって仕事があるだろう。それに今だってそれなりに忙しい時期じゃないのか?」
「そうですが和穂さんよりは忙しくはないですよ。あと…」

一瞬どうして私の業務が忙しい時期だと知っているのだろうと疑問が浮かんだが、だいたい4月は忙しい時期かと思いスルーした。

「言い忘れていたのですが、私結婚することになりまして」
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