籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】
それから数週間、和穂さんの自宅に帰宅する頻度は高くはないがそれでもたまに帰宅すればまるで“恋人”のような雰囲気の中、夕食を共にした。
彼は本当に博識で穏やかで、上品で今まで出会った誰よりもミステリアスで。
少しずつ彼との時間が楽しくなっている自分がいた。もう少しで既婚者になるというのに。
―5月
今日は内示がある。
夏子の言う通り今日は内示があるのかないのかソワソワしていた。
もしなかったとしても人事チームでは三月四月も激務であることは変わりない。
「聞いた?藤沢千佳のこと」
「何?」
「はすみの元カレと付き合ってるって周りに言いふらしてるらしい」
「そうなんだ」
「はぁ、何考えてんのかね。ま、ああいう子には一切かかわらない方がいいよ」
「同じ部署になることだけは避けたいよね」
孝太郎のことは悔しさはあるが(浮気に気づかずに結婚の話を進めていたこと)もう何も思っていない。
それよりも和穂さんとの同居解消が近づいていることの方が少し寂しさはある。
「それよりさ~知ってた?」
「何が?」
「専務変わるらしいんだよね。親会社の常磐物産の副社長?だっけ?がなんか兼任してくるんだって。それがめちゃくちゃ若くてイケメンらしい。社内の噂になってる」
へぇ、と聞き流して興味のない声を出しそれよりも内示があるのかないのか時計を確認しながらパソコン画面とにらめっこしていた。
彼は本当に博識で穏やかで、上品で今まで出会った誰よりもミステリアスで。
少しずつ彼との時間が楽しくなっている自分がいた。もう少しで既婚者になるというのに。
―5月
今日は内示がある。
夏子の言う通り今日は内示があるのかないのかソワソワしていた。
もしなかったとしても人事チームでは三月四月も激務であることは変わりない。
「聞いた?藤沢千佳のこと」
「何?」
「はすみの元カレと付き合ってるって周りに言いふらしてるらしい」
「そうなんだ」
「はぁ、何考えてんのかね。ま、ああいう子には一切かかわらない方がいいよ」
「同じ部署になることだけは避けたいよね」
孝太郎のことは悔しさはあるが(浮気に気づかずに結婚の話を進めていたこと)もう何も思っていない。
それよりも和穂さんとの同居解消が近づいていることの方が少し寂しさはある。
「それよりさ~知ってた?」
「何が?」
「専務変わるらしいんだよね。親会社の常磐物産の副社長?だっけ?がなんか兼任してくるんだって。それがめちゃくちゃ若くてイケメンらしい。社内の噂になってる」
へぇ、と聞き流して興味のない声を出しそれよりも内示があるのかないのか時計を確認しながらパソコン画面とにらめっこしていた。