籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】
私の実家は精製糖や砂糖関連商品を製造販売している企業の社長をしている。代々家族経営をしている。

 他の家とは違って所謂お金持ちであることは幼少期の頃から何となくわかっていた。成長するにつれ、両親は私の将来を完全に支配しようとした。
支配という言い方はよくないかもしれないが、私にとっては支配以外なかった。
 決められた小学校、中学校、高校へ行き、ピアノから英会話、料理教室、茶道…小さな頃から友人と遊ぶことも制限された。
習い事の毎日に辟易し、それを漏らすと酷く叱られた。佐伯家の娘として相応しくない態度だ、と。
 他の家の子は自由にやりたいことを選択することが出来る。
それが羨ましくてしょうがなかった。

 その実家と縁を切るように家を出たのは二年前だ。
大学をあと半年で卒業というとき、突然親から卒業と同時に結婚するように命じられた。
絶句した。就職だって親が指定した企業に決まり入社する予定だった。
やりたいことをすべて我慢して生きてきたが、結婚くらいは自ら選べると思っていた。
それなのに顔すら知らない男性との見合いをするように言われたのだ。
もちろん拒否権などなかった。
佐伯家の経営している会社と取引をしている会社の息子で将来的に社長になる人物との見合いだった。どこの会社だったかは覚えていない。
その話を聞いてすぐに私は家を出たからだ。
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